老後のお金が足りないのではないか?
金融庁金融審議会が、「公的年金だけでは、
老後の生活資金が2000万円不足する。」
という試算を出したことは記憶に新しい。
かくいう「老楽ライフ」を標榜するわたしも、
不安を覚えたうちのひとりでした。苦笑。
そんな中で目にした一冊、
お金の多寡だけで、豊かさが決まるわけでは、
決してない。もう一つの生き方の提案。
日本で古来、脈々と受け継がれてきた、
「清貧」を尊ぶライフスタイル。
バブル日本に猛省を促したベストセラー
所得の欲望から自己を解放することが、
自分たちの心を自由にし、豊かにすることを、
数多の文人たちの生き様に見てとる。
本書は、バブル経済崩壊直後の1992年に出版され、
たちまちベストセラーになりました。
バブルの夢から目覚めた日本人は、
金銭欲と物欲を追い求める価値観を見失い、
虚脱状態に陥っていました。
そこに「精神的な豊かさ」という
新たな価値観を示され、心惹かれた。
本書では、清貧で知られた古の文化人たちを、
人生の達人として紹介しています。
戦国末期から江戸初期にかけて
幅広く活躍した芸術家、本阿弥光悦は、
京都屈指の富豪に生まれながら、
清貧を貫いた一人ですが、
そんな光悦の生き方に影響を与えた
その母、妙秀とのエピソード、
光悦は若い頃、茶の湯に凝っていて、
あるとき、お気に入りの
「瀬戸肩衝の茶入れ」を買い、
懇意にしていた大名、前田利長に
見せに行きました。すると、帰りがけに
前田家の重臣たちから、
「殿もお気に召したようだから、
白銀300枚で譲るように」
と懇願されましたが、
丁重に断ったのです。
その顛末を帰宅してから
妙秀に話したところ、「よくぞ断った」
と、大いに喜んだそうです。
お金に左右されず、「純粋に茶の湯を楽しむ」
という精神を優先した光悦の姿勢を、
妙秀は高く評価したわけです。
清貧は、「貧乏」とは違います。
貧乏の場合、お金がなく、
貧しい暮らしをせざるをえない。
しかし、清貧の場合、
お金があるにもかかわらず、
「物質的に豊かな暮らし」を
あえて求めないのです。
所有するお金やモノが増えると、
それらに人生を支配されるようになり、
精神的な豊かさが奪われてしまうからです。
また本書は、
「足ることを知らば貧といへども富と名づくべし、
財ありとも、欲多ければ、これを貧と名づく」
財産は整理し、少数の気に入ったモノに
こじんまりと囲まれつつ、心豊かに暮らしていく。
「清貧の思想」中野孝次(著)この一冊で、
老後のお金の心配を解消して、
「老いを楽しくひとりを生きる!」
「老楽ライフ」充実させていきたいものです。