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古今東西、多くの詩人たちの作品、
〈潮騒の詩集〉
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【水の星】
宇宙の漆黒の闇のなかを
ひっそりまわる水の星
まわりには仲間もなく親戚もなく
まるで孤独な星なんだ
生まれてこのかた
なにに一番驚いたかと言えば
水一滴もこぼさずに廻る地球を
外からパチリと写した一枚の写真
こういうところに棲んでいましたか
それを見なかった昔のひとは
線引きできるほどの意識の差が出る筈なのに
みんなわりあいぼんやりしている
太陽からの距離がほどほどで
それで水がたっぷりと渦まくのであるらしい
中は火の玉だっていうのに
ありえない不思議 蒼い星
すさまじい洪水の記憶が残り
ノアの箱舟の伝説が生まれたのだろうけれど
善良な者たちだけが選ばれて積まれた船であったのに
子々孫々のていたらくを見れば この言い伝えもいたって怪しい
軌道を逸れることなく いまだ死の星にもならず
いのちの豊穣を抱えながら
どこかさびしげな 水の星
極小の一分子でもある人間がゆえなくさびしいのもあたりまえで
あたりまえすぎることは言わないほうがいいのでしょう
茨木のり子詩集「倚りかからず」より
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