(市の中心市街地の
アーケード街の真ん中あたりから
ちょっと脇道に入ったところにある
おそらく昭和初期に建てられた
明治時代以降の
鉄とコンクリートを使った
近代西洋建築技術によって
作られた近代建築のえもいわれぬ
趣きに満ちた、何とも古びた、
けれどモダン感いっぱいの建物の
前に立って、ふ~っと少し息を整えた。)
(アラ環になって、めっきり体力の衰えを
自覚するようになってきている自分に、
少し活を入れる気分で、「ヨシッ」と
一声かけて、建物の共用階段の一段目の
ステップに足を掛けた。)
(一段一段、手摺りに頼りつつ、
建物の壁面に寄り添うような気分で、
一歩一歩丁寧に登りながら、BARの
「波待ちダンデイ」の期待感に
ワクワクしている自分が心地良かった。)
(風に吹かれて、いい感じで佇む
サーファーガールの等身大イラストの前を、
同じ潮風に吹かれる気分になって入っていった。)
「チーっス」笑顔。
「お~!来たな!」笑顔。
(ゴッサンは、昼とはまったく違った
雰囲気を纏いながらも、いつもの笑顔で
カウンターの奥の一席を手で促した。)
「夜の雰囲気、全然違いますね!」笑。
「うん!夜はBARだからね!粋にね!」笑。
「ゴッサン、蝶ネクタイ似合ってますよ!」笑。
「ちょっと、頭もポマードでビシッとね!」笑。
「そうかァ!でも海に入ってた時もその感じ
だったから、違和感まったくないっすね!」笑。
「そうだな!」笑。
「店名の”波待ちダンデイ”ピッタリっすね!」
「おっ、ありがとう!まァ、
店名の名付け親はオレじゃないんだけどね!」笑。
「そうなんすか?でもいい店名っすよ!
響きもいいし、カッコいいし!」笑。
「おっ!うれしいね!ドリンク何にしようか?」
(と言いながら、スッと”オニオンスープのカップ”が、)
「じゃあ、ジントニックで!」
「了解!」
「ゴッサン、結構、本格的barっていう感じっすね!
このスープも、ちょっととろみがあって、いい風味っす!」
「うん!一応、オーセンティックバーのつもりだから!」笑。
「オーセンティックバー?」
【オーセンティックバー】
その名の通り、「本物」
「正統的」という
意味が込められた、
いわゆる「本物のバー」
バカ騒ぎして飲む雰囲気ではなく
「静かな雰囲気でお酒を味わう場所」
「まァ、まだまだ修行中だけどね!
雰囲気だけは、そんな感じでいきたいなって!」笑。
「そうっすね!お互い、そんな歳ですもんね!」笑。
「そうさ!人生、歳相応でいかないと!」笑。
「そうっすね!」笑。
つづく!